頭部外傷
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頭部外傷とは

頭部外傷とは、外部からの衝撃や外力により、頭の皮膚、頭蓋骨、および脳内部が損傷を受ける状態を指します。その重症度は、比較的軽いたんこぶ(皮下血腫)から、頭蓋骨骨折、脳挫傷に至るまでさまざまです。
主な原因として、交通事故が第1位に挙げられますが、近年では高齢者の転倒や転落事故が増加傾向にあります。家庭内での事故や階段の転落などがその例です。
頭部外傷は、表面の傷だけでなく、脳の損傷が隠れている場合もあり、放置すると命に関わる重大なリスクを伴います。軽度の症状でも早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
こんな症状ございませんか?
- 頭をぶつけた後、頭痛が続いている、または徐々に強くなっている。
- 何度も嘔吐する、または吐き気が治まらない。
- 頭をぶつけた前後の記憶が曖昧、または全く思い出せない。
- けいれん(ひきつけ)を起こした。
- 意識がもうろうとして、呼びかけてもなかなか目覚めない。
頭を打つと危ない場所

日常生活の中で、思いがけず頭をぶつけてしまうことは誰にでも起こり得ます。
例えば…
- 立ち上がろうとして頭を家具にぶつけた
- 階段から転落したり、足を滑らせて転倒した
- 交通事故で頭部を打撲した
- スポーツ中の接触や転倒で頭をぶつけた
頭部に関して「ここを打つと特に危ない」という特定の部位はありませんが、重要なのはぶつけた部位と衝撃の強さです。
注意が必要なぶつけ方
- ・交通事故や高所からの転落
- 強い衝撃を受ける可能性が高く、頭蓋骨骨折や脳内出血のリスクがあります。
- ・意識を失った状態での転倒
- 無防備な状態で頭を打つと、衝撃が直接的に脳へ影響する場合があります。
- ・繰り返しの頭部打撲
- スポーツ中の接触プレーなどで、同じ部位を繰り返し打つこともリスク要因です。
頭部外傷後に注意すること
頭部を打った後、頭痛が続く、吐き気や嘔吐がある、意識がもうろうとする、手足がしびれるといった症状が現れる場合は、脳の損傷の可能性があります。特に打撲直後の6時間と、その後24時間は注意が必要です。普段と違う行動や反応、視界の異常、繰り返す嘔吐、けいれんが見られたら、すぐに医療機関を受診してください。外見に異常がなくても重大な損傷が隠れていることがあるため、早めの対応が重要です。
症状に気をつけてください
- 頭痛が次第に悪化していく。
- 吐き気や嘔吐が続いている。
- 意識がもうろうとし、放置すると眠り込んでしまい、呼びかけても目を覚まさない。
- 物が二重に見えたり、視界がぼやけてはっきりしない。
- 手足が動かしにくく、力が入らない。
小さなお子さまは、自分の体調や症状を上手に伝えることが難しい場合があります。
- 機嫌が悪くなり、食欲が落ちている。
- 繰り返し嘔吐している。
- けいれん(ひきつけ)が見られる。
このように、普段と様子が異なる場合は、早めに医師の診察を受けることをおすすめします。
脳振盪(のうしんとう)

脳振盪は、頭部への外傷によって引き起こされる、一時的な脳の機能障害です。原則として、脳自体の損傷(器質的損傷)は伴わないとされていますが、さまざまな症状が現れることがあります。
脳振盪の主な症状
- 短時間の意識消失(気を失う)
- 健忘(頭を打った前後の記憶が曖昧、または全く思い出せない)
- 頭痛やめまい
- 吐き気や気分不良
- 音や光に対する過敏反応
- 睡眠障害(眠れない、または過剰に眠る)
多くの場合、これらの症状は2週間以内に治まります。しかし、小児や若年者では症状が長引くことがあり、注意が必要です。また、再度の頭部外傷により症状が悪化するリスクも高まるため、慎重な経過観察が求められます。
急性硬膜外血腫とは

急性硬膜外血腫は、頭蓋骨の線状骨折によって、頭蓋骨の内側を走る中硬膜動脈が損傷し、出血することで生じます。この出血により、脳と頭蓋骨の間に血腫(血液の塊)が形成される疾患です。特に、側頭部に発生するケースが多く見られます。血腫の厚さが1~2cm以上である場合や、脳に圧迫症状が見られる場合には、緊急の手術治療が必要です。手術では、血腫を除去して脳への圧迫を解放し、出血した血管を止血します。
急性硬膜下血腫

頭部外傷によって脳の表面の血管が切れ、硬膜と頭蓋骨の間に血液が溜まる疾患です。主に側頭部に発生し、強い頭痛や嘔吐、意識障害、片側の麻痺などの症状が現れます。
血腫の厚さが1cm以上になると、脳を圧迫し、命に関わる危険性が高まるため、開頭血腫除去術という緊急手術が必要です。早期診断が鍵となり、受傷後4時間以内に治療を行うことで、予後の改善が期待できます。
頭部を打った後にこれらの症状がある場合は、早急に医療機関を受診してください。
脳挫傷(のうざしょう)

脳挫傷(のうざしょう)とは、頭部に衝撃が加わることで脳が損傷し、脳内出血や脳の腫れが起きる状態です。衝撃を受けた部分だけでなく、反対側に損傷が現れる場合もあります。
主な症状には、意識障害、頭痛、吐き気、手足の麻痺、記憶障害などがあります。診断にはCTやMRIを使用し、軽度なら安静で回復することもありますが、重度の場合は手術が必要です。
頭部を強く打った場合、軽い症状でも早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
スポーツ頭部外傷
スポーツ中に頭を打つことで、脳振盪や脳の損傷が起きることがあります。脳振盪は脳に目に見える損傷がない状態ですが、時に急性硬膜下血腫や脳挫傷など重い疾患を伴う場合もあります。このため、頭を打った後に症状がある場合は、MRI検査で詳しく調べることが重要です。
また、セカンドインパクト症候群と呼ばれる、2度目の頭部外傷による脳の腫れは、特に若年層に多く命に関わる危険性があります。一度頭を打った後は、十分な休養を取らずに競技に復帰しないよう注意が必要です。
脳振盪が疑われたらすぐに競技を中止し、専門医の診察を受けましょう。安静に過ごし、医師の許可を得てから安全に競技を再開することが大切です。頭部外傷は適切な対応で重症化を防ぐことができます。
高齢者の頭部外傷
高齢化社会が進む中で、高齢者の頭部外傷が増加しています。年齢を重ねると筋力が低下し、歩行速度が遅くなり、活動量も減少します。このような身体機能の衰えにより、平地での転倒や転落が原因で打撲や骨折をするケースが増えています。また、歩行中の自動車事故も年齢が高くなるにつれて増加傾向にあります。
抗血小板薬や抗凝固薬との関係

高齢者の中には、抗血小板薬や抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を服用している方が多くいます。これらの薬を服用している場合、頭部外傷によって発生する脳内の血腫や脳挫傷が悪化し、重症化するリスクが高まります。軽い打撲でも、これらの薬の影響で状態が悪化する可能性があるため注意が必要です
慢性硬膜下血腫に注意

高齢者の頭部外傷では、頭を打った直後だけでなく、数週間から数ヶ月後に症状が現れることがあります。特に、慢性硬膜下血腫という疾患では、頭を打ってから1~2ヶ月後に血液が脳内に徐々に溜まり、頭痛や手足の力が入らない、歩行困難などの症状が現れます。血腫が自然に吸収される場合もありますが、増加して脳を圧迫するようであれば手術が必要です。この手術を行うことで、症状は速やかに改善することが多いです。
観察と早期発見の重要性
軽い打撲でも、後から慢性硬膜下血腫が起きる可能性があるため、症状をこまめに観察することが重要です。特に高齢者や認知症の方は、体調の変化を自分で伝えることが難しい場合があります。そのため、家族や介護者が、手足の動きが鈍い、元気がない、普段と異なる様子に気づくことが早期診断につながります。 頭部外傷は軽視せず、異変があれば速やかに医療機関を受診することで、重症化を防ぎ回復を早めることができます。